フェミニズム関連の楽曲紹介


トランプが当選したことにより4B運動が話題になるなど、アメリカにおけるフェミニズム運動(あるいは自己防衛運動か)が活発になっている。

この影響でTikTokで耳にするようになったフェミニズム関連と思われる楽曲を紹介する。

1. labour - Paris Paloma

「労働」 - パリ・パロマ

▼フルサイズ

現時点で3500万回再生されている。
All day, every day, therapist, mother, maid
Nymph, then a virgin, nurse, then a servant
Just an appendage, live to attend him
So that he never lifts a finger
24/7 baby machine
So he can live out his picket-fence dreams
It's not an act of love if you make her
You make me do too much labour
一日中、毎日
セラピスト、母親、お手伝い
乙女からの処女、看護師からの使用人
ただの付属品、彼に仕えるために生きている
だから彼は指一本だって持ち上げないの
24時間年中無休、赤ちゃん製造機
彼が家や土地を所有する夢を生きられるように
彼女に無理強いさせるのは愛のある行動ではないの
あなたは私を働かせすぎなの
畳みかけるフレーズが目を開くほど印象的で、耳から離れない。
Apologies from my tongue
Never yours
謝罪が私の口から出るけど
あなたからの謝罪はあったことはない
@parispalomaofficial ITS FINALLY HERE ❤️❤️ thank you so much to all of you for contributing and making such a special project. #labour #newmusic #womenoftiktok ♬ LABOUR - the cacophony - Paris Paloma

上の動画にあるように、女性たちがこの楽曲を歌う様子を撮影した動画が投稿された。

踊ることもなく、笑うこともなく。彼女らはただただ歌った。世界中の女性らが団結し、怒りを表しているのだ。

ライブでも、このフレーズを観客とともに唱和する。これほど力強い唱和は、他にはないだろう。

 

labourという曲は女性の間で共感を呼んだ。

女性の精神的労働は、invisible labor(見えない労働)と呼ばれる。

一部の男性は、この女性の見えない労働に気付くことなく、感謝することもなく、男性の特権であるかのように享受している。

このような労働はパートナー関係でなくても発生する。笑顔、愛想笑い、反感を買わない断り方、セクハラのあしらい方。

男性のパートナーができると見えない労働は、軽減するどころか増加する。それを言葉巧みに言語化してくれたのがこの楽曲だ。

If our love died, would that be the worst thing?

私たちの愛が死んだら最悪な事かしら?

この曲は、パートナーとの縁を切り前へ進むことをも肯定してくれる曲だ。独身に戻った今の方が幸せだと証言する女性は多い。

「あなたに労働をさせすぎる男性と一緒にいることは、果たしていいことなのか?」

恋愛をテーマにした曲があるなら、こんな曲があってもいい、こんな曲こそあるべきだと思わされる。

2. Dead Men Don't Rape - Delilah Bon

「死んでいる男は、レイプをしない」 - デライラ・ボン

▼フルサイズ

@delilahbon Low ticket warning👀💕 Over 3000 tickets sold so far, dont miss the feral rage this year!! Who will be screaming with me this Sept / Nov? #delilahbon #live #femalerapper #feminism #feminist #liveshow #livemusic #angrywomen #femalerage #femininerage #dmdr #deadmendontrpe #evilhatefilledfemale #tour #fyp ♬ original sound - Delilah Bon
They get so offended when I say
Dead men don't rape
But where is their anger when I say
Women are, women are, women are dying
「死んでいる男はレイプをしない」と言うと
彼らは気分を害して怒るけれど
「女性は実際に死んでいる」と言うと
彼らの怒りはどこへ

"Dead Men Don't Rape"は、Roe v. Wade判決の覆却をきっかけに書いた曲だという。

▼背景: Roe v. Wadeとは?

2022年に起きたRoe v. Wade判決の覆却は、アメリカの女性の権利に大きな影響を与えた。

1973年のアメリ最高裁の判決「Roe v. Wade」は、女性が妊娠中絶を選ぶ権利を憲法に基づくプライバシーの権利として保護するものであった。この判決により、州が中絶を厳しく制限することが難しくなり、中絶の合法性が全米で確保されていた。

しかし、2022年6月24日、アメリ最高裁はDobbs v. Jackson Women's Health Organizationという裁判の判決において、「Roe v. Wade」を覆した。これにより、妊娠中絶の合法性に関する判断は州ごとに委ねられることになったのであった。

Untapped is the anger, feminist power
A new generation are screaming, "No!"

栓が開けられてない怒り、フェミニストの力
新しい世代が叫んでいる、「ノー」と

Raped by her very own father

父親となる人にレイプされた

フェミニズム、新世代、交際関係にあるカップルのレイプについても明言する楽曲だ。嫌なことをされる、嫌なことを強いられる、「やめて」と言ってもやめない、避妊しない。同意せずに行う行為は、どれもレイプの一種だ。そういった性被害を受けている女性の怒りが歌詞に込められている。

TikTokでは、女性嫌悪者が対抗して、"Dead girls don't say no" (死んでいる女性は"ノー"と言わない)といったフレーズを使用することがある。女性嫌悪者は、抵抗しない女性であれば、たとえそれが死んでいても、眠っていても、構わず加害する。ミソジニストは支配できる状態にある女体が好きで、支配できない女性を激しく嫌うのだ。


これらの曲の共通のテーマは、female rage(女性の激しい怒り)だ。

男性の意見が通りやすく、女性の意見が無下にされる世の中で、これらの楽曲は、大きい声で主張できない環境で生きる女性の代弁者と言え、大きな力を持つ。

楽曲の影響は大きい。こう考えるのは自分だけではない、一人ではないと思わせてくれる。女性の人権が尊重されない国々のみならず、先進国の女性も怒りを叫んでいる。皆、同じ目に遭っていたのだ。

TikTokでは、良い楽曲は評価され、瞬く間に世界に拡散される。アーティストが有名かどうかは関係ない。国も関係ない。新たなアーティストを発掘できる素晴らしいプラットフォームに思う。

これからもfemale rage系ソングが生まれることを願って。

そして将来的に、female rage系ソングを作らなくてもいい世の中になることを願って。