男女に関する議論を見るにおいて、知っておくべき英語65選

男女について議論するTikTokの動画を見て!!

と急に言ったところで、何から見たらいいか分からない人もいるだろう。

気になった用語があればTikTokやインターネットで検索していただければと思い、英語圏TikTokで頻出する用語と、その意味や解説をまとめてみた。

TikTokを見なくても「海外では今何が話題になってるんだろう?」「女性目線で見た世界ってどんなものだろう?」と疑問に思う方にもぜび読んでいただきたい。

TikTokは、外国語のコンテンツが聞き取れない人向けに、YouTubeのように自動翻訳した日本語字幕を表示するオプションがある。(動画の真ん中あたりを長押し→キャプションと翻訳→キャプションを表示&日本語を選択)

※ちなみにTikTokはパソコンでも見れる。字幕は表示できるが、翻訳機能はなさそうだ。


4B movement

韓国で2019年頃に誕生した、4つの"ノー"を掲げたフェミニストによる運動である。4B運動。*1

  • 男性と性行為しない
  • 子供を産まない
  • 男性とデートしない
  • 男性と結婚しない

4BのBは韓国語でのこれらの用語の頭文字をとったものである。

家父長制や、ミソジニーに染まった悪習や文化、身近な男性からの性加害といった事象に疲弊した女性が、自身の身を守るために始めた運動だ。それがTikTokを通じて海外の女性に知られ、爆発的に支持を得て、現在では世界規模のムーブメントへと発展した。

どれだけ話題になっているかの一例を挙げると、17時間前に投稿された4Bムーブメントについての解説動画に50万回いいねが押されており、15,000件以上のコメントが投稿されている。

@itvnews Why has Trump's victory got women talking about joining the 4B movement? #itvnews #donaldtrump #4b #4bmovement ♬ original sound - itvnews

 

アメリカでトランプが勝利した際は、ハリス派の男性らも女性に4B運動を行うことに理解を示し、性加害から身を守るために運動を推奨した。これから避妊や中絶の規制が高まる恐れがあるからだ。

4Bから発展して、6B4T movement*2や、7Bといった単語も誕生している。その中には以下のようなものが掲げられている。

  • 女性が社会的に強いられる男性向けの"無料接待トーク"をしない
  • 女性差別する会社の商品を購入しない、コスメを購入しない
  • 4B運動を行っている女性たちで助け合う

つい最近4Bが日本のニュースで取り上げられたが、こちらのブックマークコメントにも男性の都合しか考えていないコメントや、真剣に捉える気がないコメント、的を外れたコメントをする人がおり、日本でも女性の体の自己決定権についての認識の差が男女間で激しいことが窺える。

Decenter men

男性を中心に置いた生活をしない。

長年の家父長制により、男性が主人公であり、女性は裏方のサポート役といった感覚が浸透している。Decenter menは、女性が自分自身を中心に生きることを提案している。恋愛や結婚から解放されると、世にはびこる有害な男性に振り回されることも少なくなるからだ。男性を中心に置かないようになると、人生の質が向上するのだ。実際に人生が楽になった女性たちが若い世代に、男性を中心にしない生き方を勧めている。4B movementその一種。

Opt out

拒否する、拒否する意思を示す。

"Women are opting out of marriage"というフレーズをよく見かけるようになった。女性は結婚を拒否し始めているという意。

女性から離婚した割合を見るに、結婚をして後悔した女性が多いという事実が徐々に世間に知れ渡っており、今では結婚の体験談や、結婚式の映像、家庭内の映像をTikTokなどで発信することで、結婚の現実を知り、結婚を自主的にしない女性が世界的に急増している。

結婚できない人を「負け組」と称す人もいるが「有害なパートナーと結婚するバッドエンドを避けたことは『勝ち』なのだから惑わされないで」と有志たちが発信している。

Misogynist 

女性を嫌悪する人。ミソジニスト。主に男性。

女性を憎むあまり、女性を怖がらせたり、脅かしたり、女性の成功や幸せを妨害すること、女性の自己肯定感を下げることを好む。家父長制のなごりでミソジニー的価値観が世の中に浸透しており、本人が女性を嫌悪していたり見下していると気づいていない場合がある。

Heterosexual cis men

自己を男性と認識している異性愛者の男性。過半数の男性のこと。

「男性」と一般化してしまうと、女性の味方が多い同性愛者やトランスジェンダーまで含んでしまうため、主語を小さくし、より正確に表した言葉。

一部の善良な男性を除き、彼らには共通していずれかの特徴がある。

  • 性的対象は女性だが、女性のことを嫌悪している
  •  女性を人間として扱わず、モノ扱いする
    • 女性の意見を尊重しない
    • 女性の"ノー"を受け入れない
    • 女性の境界線に侵入する
    • 境界線がはっきりしている女性を嫌う
  • 対価をもらうために女性に優しくするが、対価がもらえない場合は女性に優しくする必要はないと考えている
  • 女性を見下している
  • 女性に嫉妬している
  • 権力と支配を用いて、女性をコントロールしようとする
  • 自分を大切にしない
  • 感情知能が欠けている
  • 自己防衛に走って話を逸らす
  • 自分の発言に責任をとらない
  • 感情のコントロールができず、怒りやすい
  • 自分の行動によって相手が傷ついても、自分の態度や行動を改善しない

異性愛者の男性自身も、善良でない男性が多いことを認めており、女性に警鐘を鳴らしている。

Bare minimum

本当にギリギリの最低限のこと。

人それぞれではあるが、異性愛者の項目に書かれた、全ての箇条書きに当てはまらないことがパートナーに求める最低限の一例だと思われる。

The bar is low

女性の、男性に対するハードルがあまりに低いこと。

ハードルが低い例えとして、男性との初デートについて女性同士で話す時に「えっ、男性が質問してくれたの!?めっちゃすごいじゃん~!」と、それだけ低レベルなことでも盛り上がってしまうことだ。この話が共感を呼んでいるのを見るに、「デートで男性は質問さえせず、自分語りが多く、更には無料の接待トークで調子に乗りがち」というのは世界共通であることが窺える。

最低限の条件に当てはまる男性は、限りなく少ない。一部男性は、この限りなく低いハードルすら超えることができないのに、「女性は更にハードルを下げろ」と無茶な批判をすることがある。

最近では、夫に「コーヒーを作ってくれない?」と頼み、実際に作ってくれるか実験するトレンド(coffee trend)が話題となっている。中にはお願いされた瞬間立ち上がる夫、「やり方は分からないけどやってみるよ」と協力的な姿勢を示す老人もいるが、妻にお願いされる状況に混乱して何度も口答えする夫や、即答でNoと言う夫もいる。夫が妻にドリンクを頼む時と比べて、妻が夫にドリンクを頼む時は、実行率が低いことが明らかとなった。妻にドリンクを作るだけで男性が賞賛されることが、既にハードルが地の底に落ちていることを示している。

Red flag

その人は危険であるという兆候。有害な人物のこと。

TikTokでは、有害な人物の特徴を各自で発信しており、同じ轍を踏まないように知識を共有している。

交際のフェーズによって兆候の内容は変わる。例えば以下は最初のデートで気付きうる兆候の一例だ。

  • 相手に質問をしない
  • 自慢話ばかりする
  • 元恋人は頭おかしかった/メンヘラだったと言う
  • 言動に一貫性がない
  • 店員への態度が悪い
  • 早い段階であなたと結婚したいと告げる
  • 清潔感がない(服や髪や爪や歯が汚い)

Green flag

その人は安全・善良であるという兆候。善良な人物のこと。

Red flagの対義語として使われる。以下は良い兆候の一例だ。

  • デートの計画をする
  • 相手が言ったことを覚えている
  • 相手が喜ぶことを自発的に行う
  • 相手が嫌がることはしない
  • 指摘を素直に受け入れることができる
  • 一緒にいて安全・安心と感じる

Entitlement

男性には特権があるという感覚。

女性の体へアクセスする権利や、女性と接する権利が男性にはあるという感覚。

  • 男性に女性をあてがうべき
  • 女性は男性と結婚すべき
  • 女性は男性に優しく接するべき

といった思考も、男性には特権があるという感覚から生み出される。この特権があると思う男性は、女性とコミュニケーションをとる必要がないと思い込んでいたり、女性を人間扱いしない傾向がある。この感覚は家父長制によって形成されたと言われている。

Patriarchy

家父長制。主に男性が支配的で特権的な地位を占める社会システムのこと。*3

家父長制の制度がなくなれば、男性にとっても生きやすい社会になるのだが、家父長制によるメリットを享受している男性らが、家父長制がなくなることを恐れている。

Gaslighting

被害者に些細な嫌がらせ行為をしたり、故意に誤った情報を提示し、被害者が自身の記憶、知覚、正気、もしくは自身の認識を疑うよう仕向ける手法。心理的虐待の一種。*4

以下はガスライティングの一例だ。

  • 「そんなこと言ったことないよ。いつも嘘つくよね」
  • 「なんでそんなに大げさなの?大した事ないじゃん」
  • 「俺の友達もみんな同じ意見だよ。そう思うのはお前だけだよ」

意図的にガスライティングをする人は論外であるが、虐待している自覚もなくガスライティングをする人もいるため、注意が必要だ。

Narcissist

極端に自己中心的な考えを持つ人のこと。または、自己愛性パーソナリティ障害の傾向がある人のこと。

男性に多い傾向があり、異性愛者の男性の中でも際立って悪質な男性である。

ナルシシストはいくつかの特徴を持つ。

  • 相手に無関心(Dismissive)
    • 自分さえよければいい
  • 自己防衛に走る(Defensive)
  • 相手の感情を無効化する(Invalidation)
    • 「大した事ないのに大げさだ」と言う
  • 相手の不満や抱える問題を矮小化する(Minimization)
    • 「たったそれだけのことでなんで別れるんだ!」と言う
  • 自分には特権があると思い込んでいる(Entitlement)
    • 「男性には女性をあてがうべき」といった考えを持つ
  • 心理的虐待を行う(Gaslighting)
    • 被害者が自身の正気を疑うように仕向けることで「俺は正しい、お前は間違っている」という状態に持っていく

Manipulation

個人的な目的を促進するために、不正または不当な方法で、他の人に影響を与えたり制御したりすることを目的とした行為のこと。その方法とは、服従を誘導するための誘惑、暗示、強制、脅迫などが含まれる。*5

  • 心理的虐待を行う(Gaslighting)
    • 「みんな避妊してないよ」→避妊なしの性行為がしたい
  • 罪悪感を抱かせる(Guilt-tripping)
    • 「おごってあげたのに」→対価として交際や性行為がしたい
  • 会話を拒否する(Silent treatment)
    • 黙る→相手から謝罪を引き出したい
  • 脅迫(Threatening)
    • 「別れるなら〇ぬ」→破局を回避したい
  • 被害者のフリ
    • 共感させる→被害者が悪いということにしたい
  • 相手を過度に持ち上げる(Love bombing)
    • 早い段階で愛の言葉やプレゼントを沢山提供する→性行為がしたい
  • 孤独の強制(Isolation)
    • 家族や友人とLINE禁止、遊びに行くの禁止→他人の意見を聞いて目を覚まさせたくない

Weaponized incompetence

無能の武器化。

わざとできないフリをして、責任を回避し、相手に労働を押し付けること。

以下は典型的な一例だ。

  • トイレットペーパーが空になっても変えない
  • 洗濯機の使い方が分からないと主張し続けて、洗濯物の業務を回避する
  • お願いされた買い物をわざと間違える
  • 手が空いているのに赤ちゃんを放置する
  • 皿洗いをお願いされて、自分の皿だけ洗う、わざと下手くそに洗う、洗わない

Mental load

精神的な労働。主に家庭を維持するための労働のこと。

家庭の労働はinvisible laborとも呼ばれ、見えない労働と言われる。その名の通り、家庭の労働は、男性に労働と認識されない傾向がある。

以下は精神的労働の一例だ。

  • 「何か手伝うことがあったら言って」に対して、与えるタスクを考えること
  • お皿洗いをお願いしたが、しばらく経っても皿がシンクに残っており、いつ指摘するか窺うこと
  • 家計管理
  • スケジュール調整
  • 旅行の準備、帰省の準備
  • 毎日の献立を考えること、買い出し
  • 子供の体調管理、精神的な管理、洋服の管理
  • 男性側の親族や、子供のプレゼントを考えること

これらの労働によって女性の週の余暇時間は、男性と比べて5時間少ないとも言われている。

精神的労働を解決せずにいると、女性のメンタルに危害を及ぼす。

  • 燃え尽き症候群(慢性的なストレスがかかった結果として生じる情緒的消耗感)
  • パートナーに対する満足度の低下、信頼の低下
  • 自尊心の低下

こうならないために、男性が主導的にどんな精神的労働があるか調査して、理解し、労働を分担することで、パートナーの精神的労働を取り除くべきと言われている。

Emotional dumping

相手のことを考慮せずに言いたいことを配慮なく吐き捨て、相手に精神的負担を与えること。

  • 責任をとらない
  • 相手の所為にする
  • 被害者意識が強い
  • 解決策を考えない
  • 間違いを認めない
  • 相手の話を聞かない
  • フィードバックを受け入れられない

この精神的負担が積み重なることで、相手は離婚や別れを決断する。

Simp

特定の人物に対して敬意や好意を示すことを揶揄した言葉。*6

主に女性の味方をする男性のこと。

女性嫌悪する男性は、女性の味方をする男性のことを気に入らない。女性を見下しており、その女性らを味方するなんて馬鹿げているからだ。そんな善良な男性を罵るために彼らのことをsimpという蔑称を用いる。しかし女性からしたらsimpは心強い味方であり、男性からしたらもはや名誉であるので、誉め言葉として捉える人もいる。「simpほど魅力的な男性はいない」と女性らは主張している。

Masculinity 

男性らしさ。

男性らしさは個人、文化、社会、時代によって異なるが、一般的には従来のジェンダーロールによって形成される。

Emasculate

男らしさが減少すること。

一部男性は、男らしさが減ることを酷く恐れている。

その反動からか、一部男性は女性らしさを酷く嫌う傾向がある。だから彼らは、男性がネイルをすること、メイクをすること、女性らしい言葉で話すこと、ピンク色の服やスカートなど女性らしいものを身に着けることを軽蔑する。ゲイや大人しい男性、トランスジェンダーを嫌うのも、女性的要素を含んでいるからだ。

ちなみにアジア系の男性は、白人や黒人男性より男らしさが低いと判断される傾向があるため、アジア系男性も見下される対象にある。

Toxic masculinity

有害な男らしさ。

男性はこうあるべきだと主張する過激派の考え。

  • 勇敢
  • 強い
  • 競争的
  • 支配的
  • 感情を見せない
  • 弱さを見せない

文化的に、男性間で弱さを見せることは脅威であるようだ。相手より下であることを示してしまうと、下位に対する扱いを受けるリスクがあるからだと思われる。

たとえば経験人数にこだわるのも、有害な男らしさによる弊害である。他人をいじめてトップに立とうとする行為もそうだ。

有害な男らしさは非健康的だと言われている。有害な男らしさを信じる人は、以下の傾向がある。

  • 暴力的
  • 他人を助けない
  • 助けを求めない
  • メンタルケアにアクセスしない
  • 女性、同性愛者、トランスジェンダーを嫌う
  • 不健康的な食事をする
  • お酒やタバコを好む
  • 孤独

Healthy masculinity / Positive masculinity

健康的な男らしさ。

Toxic masculinityの対義語として用いられる言葉。以下の特徴がある。

  • 協力的
  • 弱さを開示できる
  • 助けを求めることができる
  • 自分の感情を冷静に説明できる
  • 自分のことも相手のことも大切にする
  • 女性、同性愛者、トランスジェンダーを尊重する

女性は健康的な男らしさを持つ男性を好む。

Male loneliness epidemic

孤独に苦しむ男性が多発している状況のこと。

有害な男性らしさが疎まれることにより、女性と交際することはおろか、友人も作れず、孤独な状況に苦しんでいる男性がこの言葉を使用しはじめた。

要は「男性は寂しくて苦しんでいる!女性がなんとかしろ!男と接してくれ!女をあてがえ!」と主張している。しかし女性は、これは男性間で解決するべきことで、女性は助言することしかできないと主張している。その状況に陥ったのは、男性の自業自得であるといわれている。

Red pill community

男性らが抱える問題を女性の所為だと信じる界隈。「俺はモテないのは女性の所為だ!」と気づき、女尊男卑を主張するアンチフェミニストのコミュニティ。

レッドピルは赤い薬のこと。映画「マトリックス」において、耐えがたくとも真実を知りたい場合に飲む赤い薬のことを指す。

Incel

女性との恋愛経験や性的経験を持つことを望んでいながら、それが得られずにいる男性のこと。Involuntary celibateの略。

インセルの中でも、モテないあまり女性を嫌悪し、女性に対して暴言を放ったり暴行を行なう人々が問題視されている。

Male privilege

男性の特権。以下は一例だ。

  • 労働
    • 同程度の労働をしても男性の方が収入が高い傾向がある
    • 女性と比べて雇われやすい
    • 子供が産まれても仕事を変わらず続けることができる
  • 安全
    • 性的暴行に遭う確率が低い
    • 知らない人から加害される確率が低い
    • 公共の場で常に警戒する必要が、女性ほどない(道端、エレベーター、エスカレーター、トイレなど)
    • 被害に遭った時、着ていた服装について批判されない
  • 社会模範
    • 独身を選んでも批判されない
    • 子供を世話しなくても批判されない
    • 子供を世話したり家事するだけで賞賛される
    • ディーラー等でまともに相手してくれる
    • 常にニコニコしてなくても批判されない
    • 性に開放的でも批判されない

Fragile male ego / Fragile masculinity

男性のエゴは脆い。男性性は脆い。男らしさって脆い。

女性がいくら柔らかく指摘しても、一部の男性は防衛的になり、逆上する。この様子が男性の脆さを表している。一部男性は自分の弱さを開示する覚悟がないし、弱点や欠点を指摘される耐性がない。どれだけ丁寧に扱ってもガラスのハートが割れる。悪質だと、ダメな部分を直す気がないのに、ダメな自分を承認してくれないと許さない場合もあるから厄介だ。

他にも、たとえば日傘や日焼け止めを塗らない男性の中には、女性らしさを拒否している人がいる。これもいかに男らしさが脆いかを示している良い例だ。日傘を差しただけで男性らしさが減るわけではないが、男性の間で男らしさが減少したと認知されることを恐れるからか、「男らしさの正解」以外の言動を回避する傾向がある。

男性らしさに追従するあまり、自分らしさがない。スイーツが好きだって、可愛いキャラクターが好きだって、メイクをしたって、男らしさが減るわけではないし、女性からモテなくなるわけではない。そんな生きづらそうな男らしさに、しがみつく人が止まない。

Power and Control Wheel

様々な暴力の形を分かりやすく表記した図。権力と支配の車輪。

全国女性シェルターネットが翻訳してくださっていたので引用させていただく。*7

DVから身を守るために知っておくと有益な情報である。性別問わず、子供にも知っておいてほしい図である。

特筆すべきは「精神的暴力を振るう」の欄だ。

  • 「私は頭が変だ」と思わせる
  • 矮小化・否認・責任転嫁する

男性から「元カノが頭おかしかった」「なんでたったそれだけのことで別れるんだよ!?」と聞いたことはないだろうか。それは図に基づくと、れっきとした暴力である。世界では、そのような発言をした時点で red flagであるということがスタンダードになりつつある。

反対に、平等の車輪も掲載する。

ここで日本で特に課題と思うのは「尊敬」の欄だ。

  • 女性の言うことに素直に耳を傾ける
  • 心から受け入れて理解する
  • 女性の意見を尊重する

一部の男性は女性に対する尊敬が欠如しているのにもかかわらず、女性にアプローチしているのだ。だから女性がいくら関係を繕おうとしても無駄であり、男性の言動に混乱して、最終的に関係が破綻するのだ。

「誠実さと説明責任」の欄に書かれていることも、ちゃんとできる男性は少ない。

  • 自分の行動に責任をもつ
  • 誤りを認める
  • 心を開いて誠実にコミュニケーションする

この図を知っていると、パートナーに少しでも疑念を抱いた時に悩む人も、立ち去る判断を早めることができるため、オススメである。

Emotional intelligence

感情的知性。他人の感情や、自分の感情を理解する知能のこと。

感情的知性がある人は、

  • 相手を理解しようと努力する
  • 相手を批判することなく、相手に興味を持って質問を投げかける
  • 相手が「悲しい、傷ついている」と打ち明けたら、共感し、事実を受け止め、自省し、改善することができる

感情的知性がない人は、

  • 共感ができない
  • 相手の所為にする
  • 相手の感情を理解しようとせず、感情ごと否定する
  • 自分の感情を説明できない

健全な関係を築くのに重要な要素とされているが、感情的知性を持つ男性が非常に少ないことが問題となっている。

他にもこのような用語があり、避けるべき特徴としている。

  • Emotionally unavailable
    • 自分の感情を共有できない人、相手の感情を受け止める余裕がない人
  • Emotionally immature
    • 精神的に幼稚な人

Empathy

共感のこと。

他人に共感することが困難な男性が多い。共感ができない人は、パートナーの感情を無下にするため、関係を崩壊させる傾向がある。

Nag

主に女性が男性に対して、不満やお願いを何度もしつこく言うこと。

Nagは、関係を維持するために仕方なく行なっている手段である。女性が複数回言うということは、それが改善しないと別れを検討するほど重大であることを意味する。しかし多くの男性は、女性の意見をまともに取り扱わずに無下にする傾向がある。

男性は女性からnagされなくなると、問題が解決したと勘違いして安心するが、女性がnagをやめるということは、問題が解決することはないと判断し、関係の維持を諦めたことを意味する。そのため男性は、女性から別れを告げられると「問題は解決したのに、なんで!?」とびっくりする傾向がある。

Blindsided

予期しないことに直面すること。

女性が不満について何度も相談しては無視された時に、限界に達して別れや離婚を告げる。そうすると男性が不意を突かれ驚く、という流れが世界共通であるあるだ。男性がろくにパートナーと対話してこず、大丈夫と思い込み、安心しきっていたことを示している。女性が黙る=パートナーのことを諦めて前に進もうとしていることを、男性は「指摘されなくなった!機嫌が直った!解決した!」と勘違いするのも世界共通だそうだ。

Broke

お金のない人。

「Broke manとは付き合うな」という先輩方の有難いお言葉が定期的に発信される。お金を稼げないから悪というわけではない。お金がない人は精神的に余裕がなく、自分を大切にせず、女性より劣っているという自分を許すことができずイライラをぶつける傾向がある。お金がない人と付き合わない方がいいとされるのは、相手に平和や安心を提供できないからだ。

Gold digger

お金目的で相手に近づく人。主に非モテ男性が女性を批判する時に使用する。

お金持ちの男性は「お金のない男性とお金のある男性、どちらかを選べと言われたら、お金のある男性を選ぶのは、女性が不利な社会において至極当然のことである」と述べている。

”Be a golddigger”(お金目的であれ)と男性が女性に発信することもある。

Boy Math

(主に数字が関連する)男性あるある。

"Boy math is being afraid of gold diggers with no gold to dig"

「奪うお金がそもそもない男性がお金を奪われることを恐れているっていう男性あるある」

Cat lady

猫を飼っている独身女性のこと。

男性が女性を脅かす時に、「独身のまま年老いて、猫だけ飼ってる女性になっちゃうよ(笑)」といった定型文がある。

しかし、女性は「何それ嬉しい!オラcat/dog ladyになる!」とむしろ触発されている。「私cat lady歴〇年なんですけど、今最高に幸せです!」といった発信もある。

女性嫌悪している男性が女性に対して「〇歳超えたら賞味期限切れ」や「~~してる女性は需要ない」と煽り、女性を焦らせて、意思を変えさせたり妥協させて結婚を急かすことがある。このような発言を見て不安に感じる女性もいるだろうが、裏を返すと「男性の目から解放される」ことと同義であり、「男性から需要がなくなることって実は嬉しいことじゃん!」と女性が気付きはじめ、男性による煽りが効果がなくなりつつある。

Cat gentleman(造語)の存在が尊重されるならば、Cat ladyも自身の人生を謳歌しているのだからそっとしておくというのが礼儀というものだが、一部男性は「女性が一人で幸せに暮らすこと」が許せないようだ。その理由は、 男性の特権があると思い込んでいるからだろう。

Projection / Projecting

自分が持つネガティブな考えを、自己防衛のために相手にそのまま押し付けて攻撃すること。心理学で投影と呼ばれる。一般の人にも見られるが、自己愛性パーソナリティ障害や境界性人格障害によく見られるとのこと。*8

相手を非難や脅迫する時に散見される。Cat ladyの例のように、「俺は猫を飼っている独身男性になることを恐れているから、女性も同じく恐れているだろう。よし、女性をcat ladyと呼んで脅そう」と勘違いと思い込みをそのまま女性に当てはめる。これがprojectionの一つである。

「女性は男性にチヤホヤされて嬉しいと思ってるくせに!」といった批判も「俺は女性にチヤホヤされて嬉しい!だから女性も嬉しいはずだ!」といった勘違いから生まれたものだ。「異性から性加害されるってご褒美じゃん!」と主張する人も同じだ。

他にも「金目的の女性はクソ!」という発言は「お金もなければ寄り添ってくれる女性もいない俺はクソ!」と自己紹介しているのと同義である。「経験人数が多い女性はクソ!」という主張も色んな理由をこじつけて説明はするものの、結局は自分が下手くそなことがバレるのを恐れていることの裏返しと言われている。

「賞味期限切れ」も同じだ。これは「僕は異性から無価値認定されていて苦しいです」と自己紹介しているだけのことだ。「僕も恐れているから、君も怖いでしょう?嫌でしょう?じゃあ妥協してでも有害な男性と結婚しましょうね」と間接的に脅迫しているのだが、女性は異性から興味を持たれないことが幸せなことだと当の男性は気づいておらず、ポジティブに反応している女性に困惑しているようだ。

なお、projectionは男女関係に限らず、どんな関係でも起こりうる事象だ。例えば、美人な人を批判している人は「自分の顔に自信がない」、派手なファッションを楽しんでいる人を批判する人は「自分のファッションに自信がない」など。妬みを含んだ行動である。

Victim blaming

事件の被害者の方を責めること。犠牲者非難。*9

自己責任論を過剰に出す人が犠牲者批判をすることが多く、ネットで多く見かける。

例えば、スカートを履いた女性、肌を多く露出している女性、夜道を一人で歩いた女性、飲み会に参加した女性、一人キャンプをした女性、男性の誘いを断った女性、性被害を受けた人、殺害された人。

男性の方は悪くない、責めてほしくないという一心で、自己防衛の手段として批判する人や、被害者を責めた方が精神的に楽だから批判する人、自分だったら上手く回避できたはずだから被害者に落ち度があると思い込む人など、理由は様々だ。

男女間においては、「他人と共同で生活する際も、自分が今まで通り自由に行動できないと嫌だ」といった、交際の資格がない価値観を持っている人が、自分の失敗を認めたくないあまり、パートナー非難を行いがちだ。

そもそもスカートを履いたって、夜道を歩いたって、飲み会に行ったって、一人キャンプをしたっても被害に遭わない世の中にしていくべきで、被害者が悪いケースなんて滅多にない。犠牲者非難が存在する限り、当たり前に思えたとしても「加害者が悪い」と強く主張し続けていく必要がある。

Insecurity / Insecure

不安や自信のなさ。

"They are projecting their insecurities onto others"(彼らは自分自身の不安や自信のなさを他者に押し付けている)というフレーズがよく使われる。

自信のない人は男女問わず攻撃的になりがちで、周りのエネルギー奪って不幸にする傾向があるため、関わらない方が吉とされている。特に、自分の弱さをごまかして隠す人や、ダブルスタンダードを持つ人(俺は良いけどお前はダメ)、言動が一致しない人も総じてred flagとされている。

「男友達と遊びに行くの禁止!」は「俺は女性と遊びに行ったら浮気するタイプから、浮気されないか不安!」という意味。「他の人との連絡禁止!」は「第三者に俺の話をして別れを決心されたら困る!」といった意味が含まれている。まともな根拠なしにこの記事を批判する人が現れたら、「より多くの女性にこの記事を読まれたら俺にとって不都合だ」という意味だ。自分に自信がないから、支配しやすい女性をコントロールしようと必死なのだ。

Boundary

身体的、感情的、精神的な健康を守るために個人が自分で設定する制限やルール。「安心・安全だ」「安心・安全でない」と感じる境界を示す線。

自己肯定感が低いと、自分の身を守ることの優先度が低くなりがちである。そんな人のために、境界線を侵害された場合に「自分がどうするか」を軸にルールを決める。

例えば、これをしたら一発で縁を切る、というルールを決めるとする。以下が一例だ。

  • 浮気した
  • 暴言を放った
  • 暴力を振るった
  • 避妊を拒否した
  • やめてと言っても聞かなかった

ルールをあらかじめ決めておくことで、実際にその状況に陥った時に、相手に引きとめられても、迷うことなく瞬時に判断して行動をとることができるのがメリットだ。

境界線については、日本語でも本が販売される程度には広まりはじめたが、まだまだ恋愛においては普及していないと感じる。境界線を侵害する男性は鈍感な人もいれば、悪意を持って故意にやっている人もいる。女性は、文化的に境界線の侵害されることを野放しにしがちであるため、境界線をあらかじめ決めておくことが大切とされている。境界線を侵害されたら、きちんと"ノー"を表明することが重要だ。

Bodily autonomy

体の自己決定権。

女性は"my body my choice" (私のからだは私のもの)という主張を掲げている。その理由として、法規制によって女性の体の自己決定権が奪われようとしているからだ。たとえ性加害によって妊娠した場合だとしても、母体の命が危機的状況だとしても、子供の命を優先する価値観が蔓延っている。

トランプが選挙に勝利したことから、アメリカ内の中絶の条件がより厳しくなる可能性があり、女性の体の自己決定権が大きな話題を呼んでいる。

Project 2025

トランプが勝利した際に推進されるとされる、保守派と右派の政策提案のこと。

このプロジェクトの中に

  • 人工中絶規制を強化する

という案があったことから、女性の体を尊重する人々はトランプに投票しないよう呼び掛けていた。

中絶が規制されることを気にしない男性はトランプに投票したが、プロジェクトにはこのような案もある。

  • ポルノを規制し、その制作者や販売者を投獄する

女性は「ポルノが規制されてもいいのか?」と呼び掛けていたが、その声はトランプ派に届かなかったようだ。トランプ派の中でも、プロジェクト2025の内容を詳しく知っている支持者はごく少数だと考えられる。

Pro-life

妊娠中絶に反対すること。

中絶を反対している男性らがインタビューされた際、「精子が殺されるのは殺人と同じだと主張されたとして、自慰禁止法やパイプカット(vasectomy)強制案が可決されるとしたらどう思う?」と尋ねられると「人それぞれ事情はあるから個人の自由であってほしい」と回答した。中絶反対派の人たちは、女性たちがどうなっても構わないと思っているが、自身の体の自己決定権は譲りたくないようだ。

Pro-choice

中絶する選択肢があることに賛成。Pro-lifeの対義語。

Romance scam

ロマンス詐欺。詐欺事件のそれとは異なる。

女性は結婚をすると、独身の時と比べて平均的に家庭内の労働量が増え、賃金は下がり、幸福度も下がり、寿命も縮むという研究結果があちこちで出ている。*10男性はその逆で、家庭内の労働量は減り、賃金は上がり、幸福度も増え、寿命も延びるといった、メリットばかり享受する。

恋愛ドラマやウェディングドレス、素敵な結婚生活を送っている夫婦などを見て幻想を抱いて一歩を踏み出した人が、悔しいことに、女性の体や労働力を利用したいだけ男性の手に落ちてしまっているのが現状だ。女性にとって恋愛や結婚は、不幸を呼びこむリスクであるため、それらをロマンス詐欺と呼んでいる。

Objectification / Objectify

モノ扱い、モノ扱いすること。

女性が男性にモノや女体として扱われ、人格や意思を持った尊重されるべき人間として扱われないことを言及する時に用いられる。

Pick better men

「マシな男性を選べよ」

女性に関して無知で無関心な男性が、女性を批判する時に用いる定型文。

これらの発言をする男性は、親密になった女性が「やめて」と伝えてもやめないタイプの人種であろう、と言われている。

どうにか分かりやすい例えがないかと考えた。あなたの現在の運勢が「吉」だったとする。あなたの将来の運勢が確定するガチャがあったとして、凶と大凶との割合が99%のガチャをわざわざ引くリスクをあなたはとるか?といったら分かるだろうか。独身で「吉」だった人生が、男性と交際したら高確率で「凶」や「大凶」の人生になるなら、リスクが高すぎるので交際しないだろう。実際、このガチャをひいた世界中の女性が「大凶」をひいている。彼女ら全員が見定めが悪くて、数少ない有害な男性を選んでしまったのではなく、世の中には有害な男性が圧倒的に多い事実を表している。だからこそ、4B movementなんて運動が勃発したのである。

それでもまだ「有害な男性ってそんなに多いか?」と疑問に思う人は、周りにいる男性が女性嫌悪しているかどうか、家でDVしているかどうか分かるだろうか。男性同士では、男女関係のような性的な取引が一般的にないため、男性目線では男性の悪い部分が表面に出づらいのである。しかしインターネットでは、女性嫌悪している男性や、家出少女に声をかける男性、セクハラなリプライをする男性、性被害を茶化す男性を、現実世界での体感より多く見かけるだろう。また、女性からは男性に対する恐怖体験がいくらでも出てくるのは、周りの女性の体験談を聞いている限り想像つくだろう。有害な男性は、表では本性を隠しているだけだ。

Nice guy

"良い人"の意。

「"優しくしてあげてる"のに、なんで女性は僕に構ってくれないの?」と疑問を投げかける男性が「俺たちはnice guy(良い人)なのに!」と主張しがちであるため、女性達も皮肉でその人たちのことをnice guyと呼んでいる。

ここでいう"良い人"とは、対価をもらおうとして女性に優しくするが、対価がもらえないと分かった途端に手のひらを返して態度を豹変させたり、対価をくれない女性にはそもそも優しくする必要はないという主義を信奉する人のことである。

本当に根が優しい人と"良い人"の違いが分からない、自称"良い人"の男性が、こじらせた挙句、怒りの矛先を女性に向ける傾向がある。

Nice guyを主張して嘆く男性ははてなでもよく見かけるため、これは世界共通の現象であり、世界共通で女性から疎まれる対象である。

Transactional

取引、業務の処理。

"良い人"のコミュニケーションはtransactionalだ」といわれている。

それは、「(性行為をするまでは)優しくしてあげるから、おごってあげるから、代わりに体をちょうだい」という、取引のような、業務的な意味を含んだコミュニケーションの仕方である。

本来のコミュニケーションはtransactionalではない。一般的には、お互いを知っていく中で共感を感じたり、尊敬の念を抱いたり、自分の会話に責任を持ち、尊重しあう安全な場を構築していき、信頼のある関係や絆を築くことで親交が深まっていく、というのが健全な関係である。

しかし、性行為という対価がもらえないと分かると態度を豹変させる人が、女性に積極的に会話してくる男性の多くを占める。それは職場、道端、インターネット、どこでも起きるものだ。非健全な関係を求めに来る男性と遭遇するたびに女性はモノ扱いをされていることを痛感する。運が悪いと危害まで加えられることもあるため、逆上させないため爆弾処理のように男性を取り扱う必要がある。

最近では、対価がもらえないと分かった瞬間、デート中に男性が姿を消して女性を雪山に置いていったという動画が話題になった。この人たちは、1年ほど友人関係であったそうだが、女性側が交際を断った途端に男性が姿を消したというのだ。最低限の礼儀がなくなるどころか、死にえる状況に置いたって気にせず下山し、車の中で待ち構えていたそうだ。女性は、そういう非道で利己的な男性らと日々接し、疲弊しているのだ。

@lifecoachshawn

 

♬ original sound - Shawnda

The bear

The bearは「男性と過ごす弊害としてこんな目に遭うなら、熊を選んだ方がよっぽどマシだ」といった意を2単語で表した言葉である。

このフレーズは、男性が女性に加害している動画や、女性のことを批判する男性の動画のコメントでしばしば見かける。この場合の女性批判というのは「女性を酷く扱っても問題なかった過去のような、文句の言わないおとなしい女性がいなくなってしまったから結婚ができない!」といった非モテ男性の怒りの表明などがある。

熊がキーワードになるようになったきっかけは、「もしもあなたが女性で、森の中で彷徨っていた場合、(もしくは自分の娘が森の中で彷徨っていた場合)、出会うなら熊と男性、どちらの方がマシ?」という仮説的な質問が2024年、世界中でで話題を集めたことだ。

この質問に対して、多くの女性は熊を選ぶ。善良な男性でも目を開くような驚きがある質問であったが、一部の男性がそもそも熊を選ぶ理由が理解できず怒りを表明し、大きな議論となった。それは、女性が過ごす世界の視点を一ミリも理解できていないかつ、ひどく無関心である男性が大勢いることを意味する。

熊は生命の維持のために女性を捕食し殺害する可能性があるが、男性は快楽・支配のために性加害したりなぶり殺す可能性がある。そんなリスクをとるくらいなら、熊に食べられる方がよっぽどマシと、女性が自分の経験を振り返った上で自主的に熊を選択しているのだ。

実際、既婚者の男性が「もしも娘が…」と問われた時、「熊」と答えている。

@jennandtoni His questions 😂🥺 #husbandreacts ♬ original sound - Jennifer and Toni

「人間のことを信じているが、男性→女性に対してはな…森の中の誰にも見られないところでと何かされうるとなると…熊だ。難しい問題じゃないはずなのにな…」と戸惑いながら熊を選んだ。善良な男性は、見知らぬ男性に対して、どれくらい女性に危険が伴うのか十分分かっているのである。

女性は日常的に男性から好奇の目に晒されており、実際に多くの被害に遭っている。女性は、男性からのアプローチをどれだけ慎重に断っても暴言を受けたり殺されるリスクがある。*11

一部の男性は「ランダムな男が高確率で悪い人だと思うのか!馬鹿げている!」と矛先のズレた怒りを表明するが、これは見知らぬ男性が実際に善良なのか悪かどうかの議論ではない。見知らぬ男性そのものがリスクの塊であって、女性にとってそれは日常的に警戒し避ける対象であるという観点を理解しているかどうかが問われる質問なのだ。

熊を選ぶ女性の中には「男性に襲われたと言っても信じてもらえないが、熊に襲われたと言ったら信じてくれる」「熊に襲われた場合は何を着ていたか聞かれない」という主張があり、それが耐えがたく悲しい事実なのだ。

海外のまともな人のリアクションと、ブックマークコメントのリアクションが正反対で、はてなにいる世代の日本人男性はもう手遅れのなのだなと感じた。

この議論は男性にも分かりやすく説明している海外の動画がTikTokに沢山上がっているので気になる人は#manvsbearのタグを見てもらいたい。

Junko Furuta

女子高生コンクリート詰め殺人事件の被害者。

"The bear"とともに、"Junko Furuta"のたった2単語はよく見るコメントである。「Junko Furutaさんの事件を忘れるな」のような意味合いを持つ。

道端を歩いているだけで最悪拉致されて、熊以上に残虐な被害に遭う可能性があるケースとして、海外でも有名なのだ。

実際に同様の被害に遭う"確率"の話をしているわけではない。"誰でも" Junko Furutaさんの立場になりえたという話だ。男性が痴漢冤罪の被害に遭う確率は、女性に対する痴漢や性被害の件数と比べたら微々たるものなのに、いつか自分が痴漢冤罪で訴えられられるかもしれないという事実に恐れて、警戒して自衛するのと同じ話だ。

一方女性は電車のみならず、全ての場所が安全・安心とはいえない。道端、トイレ、スーパー、エスカレーター、エレベーター、どこでも被害が発生している。しかし、女性が日常的に警戒せざるをえない日々を過ごしているという観点が抜けている男性が未だにあまりにも多い。だから女性は"Junko Furuta"とコメントし、意思を表明しつづけるのだ。

女性は、偶然その場に居合わせただけで標的にされてしまう理不尽さに遭う可能性を忘れずに生活を送っているのだ。実際、女性は男性から多くの被害に遭ってきているし、自衛しなかったらしなかったで「警戒しなかった女性が悪い」とセカンドレイプされるので、警戒する・自衛するがデフォルトになっている女性が多いのである。

残念なことに警戒する女性を笑い者にする男性が日本には多く、テレビでも平気で芸能人がトークのネタに使う*12くらい真剣に取り扱われてないため、「相手が善人であるかどうかにかかわらず、見知らぬ人に対して女性が警戒することは当然のことである」ということ、そしてこんな野蛮な世の中なので、「善良な男性は、余裕があれば可能な範囲で女性が安心・安全に感じるために配慮することが推奨される」ということを今後も発信し続けていく必要がある。

Not all men

「男性が全員そういうわけじゃない」

こういった話をするとこのように反論する男性がいる。実際、熊の質問に傷ついた男性らがnot all menと反論していた。だが犯罪者の過半数は男性だし、性加害にいたっては99.9%男性が加害者である。*13犯罪でないにしろ、男性が家事や育児に十分な協力をしないという声だって世界中で絶えない。女性に非協力的だったり、女性を嫌悪している時点で女性の味方ではない。

Not all menと主張する男性は、「有害な男性を見極めることができる」と思い込んでいるが、実際にどの男性が危険か言い当てることはできないだろう。有害な男性は、どんな手を使ってでも女性から利益を享受しようとする。男性として生きていると悪い男性にそんなに出くわさないのかもしれないが、女性として生きていると高頻度で悪い男性に絡まれ、運が悪いと被害に遭う。女性と真剣に一緒に過ごした経験のある男性なら、理解できるだろう。

最近見たNot all menに対するカウンターは、

"not all men, but enough men"

(全員が悪ではないが、もう十分な数の男性が加害してきたよね?)

"not all men, but all women"

(全ての女性が男性による性差別や加害の被害に遭っている)

"not all men, でもあなたは加害者の男性に問いただしたこともないでしょう?実際に性加害やハラスメントを行う人に立ち向かったことありますか?"

「全ての男性が戦争に行っているわけではないし、危険な仕事をしているわけではないから、not all menと主張するのなら、男性の功績(兵隊、危険な仕事、発明、インフラ)をあたかも自分の功績かのように主張しないでくれますか?」

といったものだ。

加害者の男性に立ち向かった経験がある人は、not all menと女性に反論することはない。

昨今の風潮としては、男性自身も「男性が責任を取って行動して世の中を改善すべき」という論調で発信しており、男性が男性の悪い行いを批判する習慣がTikTokに浸透している。この点において日本は遅れていると感じる。

次の動画ではロサンゼルスの性加害者として登録された人々の位置が掲載されたマップを紹介している。これを見てもまだ、not all menと言えるだろうか。

@gammisoou These “men” are apparently advocates against SA only when a woman does it. #equality #feminism ♬ original sound - normalgirl1234

No means no

"ノー"と言ったら"ノー"だ。

女性が男性にノーと伝えたにもかかわらず、完全に無視して加害を続ける恐怖映像に対してよく用いられるフレーズ。女性を人間扱いしない男性と出くわすと、女性の意見や女性の"ノー"は無視されがちだ。

"ノー"と言っても加害を続ける様子はナンパや付きまといに多くあるが、他にもセレモニーで女性が「ケーキを顔にぶつけないで」と懇願した直後に女性の顔にケーキをぶつけたカップルの映像がある。

@kayla.g21

should the girl in pink go to jail for doing that to him in defense of her best friend? I’m sorry but if your wife asks you not to shove cake in her face after she was so proud of her makeup & you deliberately ignore her, jail

♬ original sound - CFB_Daily

「冗談じゃん!」と言い訳をする男性の顔に、女性の親友がいざケーキをぶつけたら男性がキレるという、「自分は酷いことされたくないけど、パートナーの女性には酷いことをしていい」といった歪んだ価値観が表れている。(その後無事に離婚したのこと)

日本でも、一人キャンプした女性が断っているにも関わらずしつこく付きまとい、終いには「俺、君に興味ないから」と態度を翻す、典型的な様子を窺うことができる。

この背景として、多くの男性が普段から、女性は男性以下で同等に扱う必要がなく、女性の意思は尊重しなくていいという深層心理のもと行動している。

Childfree

子供を持たない人のこと。

Childlessと比べて自発的な、ポジティブなニュアンスを含む。

自分も周りも男性からトラウマ級の経験をさせられたことにより、自主的に結婚しない人や、結婚しても自主的に子供を作らない夫婦が増加している。有志によってchildfreeの人たちの安全なコミュニティをTikTokにて構築されつつあるが、反感を持つ人たちがコミュニティに侵入して暴言を含んだ批判をする様子がよく見受けられる。

Grape

レイプのこと。

TikTokなどの媒体では「レイプ」などの発言は削除されやすいため、代わりの用語が使われている。グレイプと発音する。絵文字で🍇とも表記される。

そもそも性被害が一般的に存在する世の中で、それらについて会話できる場を提供すべきなのだが、アプリの運営元が言論統制で有名な中国のため、どうにもならない状況だ。

SA

性的暴行のこと。Sexual Assaultの略。エスエーと発音する。

レイプ同様、TikTokなどの媒体で投稿が削除されやすいため、代わりの用語が使用されている。

アメリカでは、性的暴行を行なった経験のあるトランプが大統領として選ばれたため、国民の半数以上が実質性的暴行を肯定していたり、女性の体の自己決定権について気にしないことが明らかになった。アメリカは今まで以上に安全や安心な場でなくなってしまったことから、4B movementに参加を表明する女性が相次ぎ、トランプ政権中は少子化が更に加速するであろうことがTikTokの状況から見受けられる。

Your body, my choice

「お前ら女性の体の自己決定権は、我々男性にある」

2024大統領選が終了した直後にNick Fuentesという極右の男性が発した言葉である。 "My body, my choice"という女性の自由を主張するスローガンをふざけて改変したものである。*14

このフレーズは女性嫌悪派の間でバズってしまい、女性の動画のコメントでも散見されるようになった。アメリカの学校の男子生徒までもが女子生徒にこのフレーズを言ってしまったほど、社会に悪影響を及ぼしている。

この反動で、Nick Fuentesの住所が晒される事態となってしまった。オンライン上に私的な情報を晒すことはdoxx, doxxedと言うそうだ。

女性嫌悪をする中絶反対派は、母体の命より子供の命を尊重すべきと主張していたが、実際は女性から自由を奪って支配下に置きたいという本心がこの発言によって表面化された。

Celibacy / Celibate

結婚・性行為しないこと、またはその状態。

You know full well a vow of celibacy is not the answer

「自発的に結婚しないことや、性行為をしないことをを誓うのは、正解じゃないって分かってるでしょ?」

海外のマッチングアプリBumbleの、炎上した広告のキャッチコピー。

女性の体の自己決定権を煽り、大バッシング。広告であるはずなのに退会大会が発生してしまった。後に会社が謝罪に転じたがもう手遅れで、大勢の人が「もうマッチングアプリは一生やらないと決めた」と決心し、女性同士の結束が高まるきっかけとなった。

Men need to suffer consequences

「悪い行いをした男性は、きちんと悪い報いを受けるべきだ」

こちらはYour BF's Worst Nightmareさんを含む複数の女性による主張で、私が気に入ったフレーズなので紹介する。「一部男性は痛い目に遭わないと、悪い行いをいくら制止しようが幾度となく繰り返す。」という主張だ。彼らは女性の話を聞きやしないし、LINEもまともに読まないし、質問も投げかけない。彼らを学ばせる唯一の方法は、彼らが与えている恐怖や痛みを自分で実感させるしかない、という主張だ。

例えばナンパをされると女性は恐怖を感じたり嫌な気持ちになるが、男性は"ノー"を何度も突き付けられても、諦めるまで女性を何十メートルも付きまとうことがある。しかし、女性が奇声を発すると、男性は驚いてナンパを止めて逃げる。

男女間の交際でも同じだ。女性が別れ話を始めたら、危害を加えるのを一時的に止める。恋人がいなくなる状態を恐れたからだ。

痛い目に遭わせる手段の一つとして、男性からの指摘を受けさせる、というのも有効であると考えている。女性には反抗して暴力や暴言をする人も、同胞の男性から指摘されると自省する場合があるからだ。

4B movementの発展版にも近しい話があったのだが、女性の優しさや配慮、"無料接待トーク"に男性をタダ乗りさせるのはもうやめよう、という話に通ずるところがある。女性の被害や人権について気にしない人らに優しくする時代は終わろうとしている。

Men are the issue / The problem is men

「男性側に問題があるのだ」

男性→女性に発生する、容認できないレベルの恐ろしい行為が高頻度で行われている(性加害、殺人など)。男性による加害がある時、女性に落ち度があったかもしれないという批判が必ずといってもいいくらい出てくるが、根本は男性側に問題がある。心の中に留めるなり、治療するなり、何かしらの対処が必要があるのは、紛れもなく男性なのだ。

たとえばセクハラ発言を「冗談だってば」であしらおうとする男性は、反射的に責任を相手に押し付け、自身の発言の責任を避けている。責任から逃げることが常習的である男性側に問題があるのだ。

被害者批判を止めるためにも、この認識を世間に浸透していくべきだ。

@maddys___world #ukcrime #ukcrimetok #crimestories #crime #womensafety #womenoftiktok ♬ original sound - Maddy

Men aren't dumb

「男はバカじゃない」

「男はバカだから」という言い逃れで男性の悪事が許された時代もあったが、悪いことだと分かった上で、見逃してくれる前提で故意でやっていることが多々ある。男性はわざとやっているから、頑として許さない。そのような姿勢をとるべきことを意識させられるフレーズだ。

Make me a sandwich

「俺のためにサンドイッチを作ってくれ」

FPSゲームボイスチャットで、女性を嫌悪している男性プレイヤーが女性プレイヤーへ煽る時によく使われる定型文。「君サンドイッチも作れないの!?可哀想…!」と同情すると男性は発狂する。なお、女性プレイヤーの方が強いため男性プレイヤーがまんまと倒されて発狂するのが動画のテンプレである。

Stitch incoming

「他人の動画再生中。この後、動画に対する私のリアクションを流すからしばしお待ちを」

クリエイターが他人の動画についてコメントする際、その動画を冒頭に張り付ける習慣がある。動画をスキップさせないためにこのフレーズを載せる。

Whataboutism

自身の言動が批判された際に、直接疑問に答えず、“What about ...?”(「じゃあ○○はどうなんだ?」)と、話題をそらすことを指す。*15

こういったジェンダーの話をすると「じゃあ女性→男性の被害は?」「男性も被害に遭ってるけど?」と他の議題にすり替えようとして、男性の責任について明言を避ける人が出てくるが、議論したいことがあれば自身のブログ等で綴ればいいことなので、「whataboutismやってるなあ」と無視することが推奨される。


さて、いくつご存じだっただろうか。

インターネットがなかった過去と比べると、今は若者にも身近なプラットフォームで女性にとって有益な情報が発信されており、男性から女性への被害がより鮮明となった。これにより女性の人生の質が改善しつつあるものの、まだまだ課題は山積みだ。

これから善良な男性にしてもらいたいことは、変わらず女性を尊重することと、女性の被害について関心を持ち続けること。

もし余裕があるのなら、インターネット上で善良でない男性を発見した際には批判の意思を表明したり、現実世界でもそのような空気を形成していくこと。女性が安心・安全に感じるために日常的に配慮すること。いかなる性加害も許さないと主張し続けること。男性が違和感のある言動をとった時に声をあげること。女性の被害や人権について女性と話し合うこと。そして男性同士でも女性の被害について話し合うことが推奨される。

この記事を読んで興味を持った方は、TikTokをぜひご覧ください。

女性について話し合う人が少しでも増えることを願っています。

If anyone ends up in this article, feel free to use this glossary.